東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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耐震補強の妥当性認められず校舎閉鎖
 「コンクリート強度が公的基準に達していないため、耐震補強したと判断できない」――。大阪府泉大津市立上條小学校3号館で、2010年に実施した耐震補強の妥当性が府に認められず、閉鎖を余儀なくされる事態が起こっている。13年11月施行の改正耐震改修促進法で義務付けられた耐震診断結果の報告で問題が表面化。市は保護者に説明し、16年10月に校舎を閉鎖した。耐震補強の事業費は約3300万円だ。
 発注者の泉大津市教育委員会は、16年11月に「上條小学校3号館耐震補強設計に係る第三者委員会」(委員長:阿波野昌幸・近畿大学建築学部教授)を設置。2回の会合を開き、17年3月に報告書をまとめた。

 3号館は延べ面積1276㎡で、地上3階建て。1階と2階が鉄筋コンクリート(RC)造、3階が鉄骨(S)造だ。1963年の竣工で、65年と72年に増築している。第三者委員会がまとめた報告書によると、補強前のコンクリート強度は1階部分で11.07N/mm2、2階部分は6.22N/mm2だった。いずれも、国土交通省が耐震診断の技術上の指針と位置付ける、日本建築防災協会の基準の適用条件「13.5N/mm2以上」を下回っていた。
 耐震補強を実施した主な経緯は、こうだ〔図1〕。市は2009年8月、耐震診断と耐震補強設計について設計事務所と業務委託契約を結んだ。この設計事務所の現場調査で、コンクリート強度が低いことが判明。設計事務所は、耐震補強設計は困難と判断し、辞退を申し出るとともに、「解体撤去すべき建物である」との見解を市教委に伝えていた。
 市教委は、建て替えに方向転換すると計画年度内に耐震化が完了できず、耐震性能の低い建物の存続期間が長引くため耐震補強の方向で検討せざるを得ないと判断。10年2月、別の設計事務所と覚書を交わしたうえで耐震補強設計の契約を結んだ。
 覚書には、コンクリート強度が建防協の耐震診断基準の適用条件を下回っていることを前提とした業務であることなどが記された〔図2〕。同年6月には建設会社と契約を結び、11月に工事が完了した。

 3号館の耐震補強は既存躯体の外側にRCフレームを設置するものだった。Is値(構造耐震指標)は耐震補強前は0. 10。震度6強から7程度の地震で「倒壊または崩壊する危険性が高い」値だ。この値は耐震補強によって0.73とし、文部科学省が公立学校施設で求める0.7以上を満たす計画だった。第三者委員会はこの補強設計について「耐震性能・構造耐力を確保するために可能な限り多くの配慮や工夫がなされている」と評価した。
 ただし、建防協の耐震診断基準の適用範囲外なので、求まる耐震性能は参考値にすぎない。そこで府は16年3月、耐震補強済みと判断できる文献の提示を求めた。市は16年5月日本ERIに耐震判定を依頼したが、コンクリート強度が低いことを理由に評価を受けられなかった。

 第三者委員会の報告書では、コンクリート強度が低いことを認識しながら、市教委が耐震補強を実施した理由を、次のように結論付けた。
 市教委は10年度に耐震補強工事を完了する予算を組んでおり、予算消化と早期耐震化を優先して耐震補強以外の手法を検討しなかった。また、文科省の補助金を必要としないため、第三者機関の評価書を得ず、耐震補強をすることに疑問を持たなかった。
 設計事務所や市職員らの責任については、違法性があるとは考えにくく、責任は問えないと言及した。建防協の耐震診断基準にコンクリート強度が非常に低い建物を「補強してはならない」という記述はないからだ。
 再発防止策として、業務の方針転換を図る際は、有識者などの第三者から意見を聞いたり、国や府に相談したりすることを求めた。また、公的基準を満たさない判断をする場合などは特に、議論・検討の過程を記録に残すことが最も重要だと指摘した。
 第三者委員会の委員を務めた日本建築構造技術者協会関西支部の小倉正恒支部長は、「使用を続けても安全な保証がない。改正耐震改修促進法の施行前に改修されているため、耐震診断の報告義務が生じなければ表面化しなかっただろう。コンクリート強度がここまで低い耐震補強は、よくあるケースではない」と話す。
 市教委は現在、3号館の代替施設として、特別教室(プレハブ)棟の建設を計画している。特別教室棟は、17年8月末の竣工を目指す。同棟の総事業費は約6600万円だ。1、2、3号館を通した全館建て替えについても協議中だという。  (谷口りえ)


〔図1〕上條小学校3号舘の耐震補強をめぐる経緯
2009年 8月 泉大津市教育委員会が耐震補強設計の業務委託契約を設計事務所と締結
2010年 2月 別の設計事務所と覚書を交わしたうえで、耐震補強設計の業務委託契約を締結
  6月 施工会社と耐震補強工事の契約締結
  11月 耐震補強工事が完了
2013年 11月 改正耐震改修促進法が施行
2015年 12月 上條小学校の耐震診断結果を大阪府に報告
2016年 3月 上條小学校3号飴のコンクリート強度について、府建築防災課が指摘。追加資料の提出を求める
  5月 府と市が日本ERlに耐震判定を依頼も、低強度コンクリートであるため評価できないと の回答
  ~7月 市が府と協議。府から最終的に「耐震補強済みと判断できない」との回答
  9月 泉大津市議会(厚生文教常任委員会協議会)などに報告。3号館から普通教室を移動することが決定
    保護者説明会(計3回)を開催
    普通教室を1号舘(1969年竣工、RC造)、2号館(66年竣工、RC造)へ移動
  10月 3号舘へ通じる渡り廊下を閉鎖。3号舘閉館
  11月 「上條小学校3号館耐震補強に係る第三者委員会」を設置
  12月 第1回第三者委員会を開催
2017年 1月 耐震補強設計を担当した設計事務所の立ち合いのもと上條小学校の現地確認
  2月 第2回第三者委員会を開催
  3月 第三者委員会が市に報告書を提出
(資料:第三者委員会の議事録や報告書を基に本誌が作成)

〔図2〕覚書では公的基準値以下が前提
(ア) 本業務は、現地調査結果から当該校舎のコンクリートの最低強度が、(財)日本建築防災協会「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」(以下「基準」という。)に記載された最低強度を下回ることを前提とするものである。
(イ) 「基準」による仕様規定(最低強度Fc13.5N/mm2以上)を満足していないこと以外は、「基準」に則り構造計算を行うものとする。
(ウ) 校舎の安全については、耐震診断補強の目標である大地震時において校舎の倒壊を防止することとし、中地震時における校舎の損傷等について「受託者」は責を負わないものとする。即ち、通常の耐震補強のための構造計算と同レベルの設計を行うものである。
(資料:第三者委員会の報告書から抜粋)


ソース :
日経アーキテクチュア 2017_5-11
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