東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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木製床が裂け利用者に30cm刺さる
 体育館で勢いよく木の床に滑り込んだところ、ささくれが刺さり、床が裂けて木片が背中から肺を貫通、肝臓まで達した――。消費者安全調査委員会(消費者事故調)は5月29日、そうした重大事故を受けて実施した調査の報告書を公表した。水分による木材の寸法変化、長期利用による床材の劣化などが原因として考えられる。海外では死亡例もあるという。
 調査のきっかけとなった、冒頭の被告が発生したのは2015年。富山県立大学の講堂でのことだ。フットサルの練習をしていた学生が、ボールを奪おうとしてスライディングした。滑り込む際、ささくれの先端が背中に刺さったのをきっかけに、滑った勢いで床材が木の繊維方向に裂け、学生に深々と刺さった。報告書の事実認定によると、床材はくさび状に剥離しており、刺さった木片は長さ約30cm、厚さは最も厚い部分で7mmもあった。
 この体育館は事故当時で築51年、床の全面張り替えから25年が経過していた。長年の利用で床全面にわたり段差、割れ、塗装の剥離といった劣化が確認され、目地は最大5mm開いていた。雨漏りにより、床板が水に濡れて変色した部分も確認された。25年にわたり、再塗装などの工事は実施されていなかった。

 調査では老朽化だけが原因と限らないことも分かった。消費者事故調のまとめによると、剥離した床材が利用者に刺さった事故は過去10年で少なくとも7例。うち13年の事故は築2年の体育館で発生した〔図1〕。
 築浅でも床材が剥離した要因として報告書は、事故直前に床面に不具合が生じていたことを取り上げた。この体育館には中央付近に支柱穴が設けられていたが、事故の約半年前に床板が10mmから15mmほど長手方向にずれ、支柱が入らなくなっていた。
 この体育館では引き渡し当初、床が湿気で濡れた時期があり、この際は運営者が空調や換気扇の稼動により対応していたという。消費者事故調は、木材には含水率の増減で寸法変化する特性があることから、「床の変形が一部のエリアに偏って力が集中した」ことが割裂の要因となった可能性があるとの見方を示した。 11年に事故が発生した別の体育館では、床材目地の固着による亀裂も見つかった。以前の塗装工事で目地に塗料が入り込んで固着、その後に床材が寸法変化して目地付近で裂けたとみられる。事故を受けて所有者が床の再塗装を決め、塗膜を取り除いた際に発見された。

 今回の調査では運営面の全国的な課題も判明した。
 消費者事故調は日本体育施設協会発行の手引書「スポーツフロアのメンテナンス」に基づき、体育館などの木製床は乾拭きのみで清掃し、水分を可能な限り持ち込まないようにするのが鉄則、と説く。ワックス掛けは禁止事項だ。ワックスを掛ける前には水拭きで床面を清掃しなければならず、この際に床材が水分を吸ってしまうためだ。ワックスの代わりに、こまめな再塗装が推奨されている。
 だが15年の事例では年2回、11年の事例では年1回ペースでワックス掛けされていた。さらに調査過程で消費者事故調が全国の体育館運営者を無作為抽出してアンケート(学校1601施設、公共体育館641施設が回答)を実施したところ、学校の46%、公共体育館の42%が定期的にワックス掛けを実施していたことも判明した。
 消費者事故調はこの結果を受け、文部科学省への意見として「水拭きおよびワックス掛けは行うべきではない」と、強く注意喚起した。
 また、床の小さな亀裂が重大事故を招く恐れがあることを十分理解し、モップにストッキングをかぶせて床面を滑らせるなど、日常的な点検を実施するよう求めた。
 再発防止策では、設計・施工者にも言及。「使用開始2年から3年でポリウレタン樹脂塗料の重ね塗り、10年程度で全面サンダー掛け後の再塗装、20年で下地を含む床全面の張り替え、といった計画的な改修が必要。設計・施工者は、改修時期の目安や維持管理方法を所有者に確実に伝える必要がある」と訴えた。(池谷和浩=フリーライター)

〔図1〕過去10年で7例を確認
発生年 運動種目 負傷部位 入院日数 完成はたは
全面改修
からの年数
床材の種類 工法(※)
2015年 フットサル 背中(内蔵損傷) 24日間 25年 短層フローリング
(カバ材、厚さ18mm)
特殊張り
2014年 バレーボール 腹部 12日間 31年 不明 不明
2013年 バレーボール 腹部(内蔵損傷) 2年 2年 複層フローリング
(合板基材・カバ材張り、
厚さ18mm)
普通張り
2013年 バレーボール 腹部 26年 26年 短層フローリング
(アサダ材、厚さ20mm)
特殊張り
2011年 バレーボール 胸部 8年 8年 短層フローリング
(カバ材、厚さ不明)
特殊張り
2008年 バレーボール 胸部 16年 16年 不明 不明
不明 バレーボール 左大腿部から下肢 不明 不明 不明 不明
※「普通張り」は床材の雄ざねに隠し釘を打ち込んで張り進める工法、「特殊張り」は床材をビスで直留めした後にビス穴を木栓で埋める工法(資料:消費者安全調査委員会の資料をもとに本誌が作成)


ソース :
日経アーキテクチュア 2017_6-22
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