東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
東洋構造コンサルタント_最新情報 東洋構造コンサルタント_会社情報 東洋構造コンサルタント_事業部 東洋構造コンサルタント_実績 東洋構造コンサルタント_お問い合わせ
東洋構造コンサルタント_トピックス

最新の記事一覧
コストコ崩落事故で設計者3人不起訴
過労自殺が伝えた「新国立」の現実
震度4で天井損傷も「過失はなし」
エスカレーターからの転落防止で指針
浸水区域にかさ上げ義務付け、滋賀県で全国初
「渋谷再開発」現場で仮設倒壊、桁の切断後に
ロンドン火災、惨事の原因
ミューザ川崎の震災復旧巡る訴訟和解へ
最大3万棟で石綿対策未実施
火災警報器を隣接建物間で連動
木製床が裂け利用者に30cm刺さる
新耐震木造の耐震性能を簡易にチェック
マンション敷地に戸建て、容積率違反に
京町家解体の事前届け出を義務化
容積率緩和で都が促すマンション再生
大規模倉庫の36%で防火設備の閉鎖障害
横浜市の杭未達マンション、12月に解体着手
耐震補強の妥当性認められず校舎閉鎖
熊本地震からの宿題  建物の「地下」に死角あり
アスクル倉庫火災 防火シャッター閉鎖せず
長野市庁舎のRC外壁にひび割れ
マンション建設現場でドローン墜落
都市公園内の保育所開設が可能に
温水プールの天井材落下が相次ぐ
九段会館、天井崩落メカニズムを推定
熊本被災地の宅地耐震化事業を拡充
熊本県益城町、市街地に建築制限
建設中「地下室マンション」確認取り消し




過去の記事一覧
震度4で天井損傷も「過失はなし」
 築2年に満たない施設なのに、震度4で天井板が損傷――。熊本地震で被災した佐賀県鳥栖市の公共施設、鳥栖市学校給食センターの天井被害を巡り、市が設置した第三者による被災検証委員会が調査結果をまとめ、6月16日に市長へ報告した。検証要は、設計・施工者の「過失はなし」としたうえで、暇痕担保責任があるとして施工者に補修を求めるのが相当と結論付けた。
 問題となった天井の損傷が確認されたのは16年4月16日の午前だ。16日未明に最大震度7を観測した熊本地震の本震が発生。鳥栖市では震度4の揺れ、最大加速度99.2galが観測された。
 同施設は鉄骨造、地上2階建てで、延べ面積3451㎡。市内8校の小学校全てで給食室を廃止して一元的な配食に切り替えるため、市が整備した施設だ。13年7月に着工し、14年8月に竣工した。設計者は安井建築設計事務所、施工者は今泉建設・鳥飼建設JVだ。
 施設は1階に作業スペースや荷さばきスペース、2階に来訪者向けエントランスを設ける配置となっていて、この2階エントランスホールで天井が損傷した。カーテンウオールを支持する方立てに、揺れた天井が衝突。衝撃力が生じて、壁付近の天井野緑や、回り緑まで損傷した。
 仕様書では6cmのクリアランス(すき間)を設けることになっていたが、損傷が生じた方立て付近のクリアランスは調査時点で4cmだった。なかには1cmしかクリアランスがない部分もあり、ばらつきがあった。
 天井裏では脱落した斜材も見つかった。前震または本震のいずれかの揺れで外れた可能性が高いが、地震力が加わって破損したのではなく、留め金が外れて落ちた格好だった。
 他の部屋では、回り緑に接する天井板が引っ掛かれるように損傷した部位もあった。

 検証委は、損傷状況から約5cm強は横揺れしたと分析。被災の基本的な要因について吊り材・斜材の拘束効果が減少していたためと推定した。
 地震発生時に建物が揺すられた際の加速度を100galと仮定して、天井の構造計算を実施。その結果をこう記した。「斜材が水平変位に対する拘束効果を有していれば、1cmに達する変位はあり得ず、破損に至ることはなかった」
 斜材が機能しなかった原因について、報告書では天井が想定通りに仕上がっていない点を挙げた。焦点となったのは回り緑だ。施設に使われた回り緑はL字形のアルミ製品で、壁側に接合するものだ。「現地調査において回り緑を切断・撤去したところ、エントランスホールで1~2mm程度、天井ボードが下がったことを確認している。これは回り縁付近で天井ボードが持ち上げられていたため」と記す。
 天井板の自重が想定通り野緑にかかっておらず、斜材も緩んだ格好で取り付けられていた。このため「吊り材と斜材によるトラス構造が十分な剛性を有さなかったのでは」、というのが委員会の措く損傷発生メカニズムだ。クリープ現象で天井中心部分が変形し、ボードが回り緑に載った可能性がある。

 施設は改正建築基準法施行令の施行前に着工しており、特定天井としての対策は求められていなかった〔図〕。また、天井は熊本地震の際の鳥栖市の揺れでは本来、ほとんど変位しない仕様となっていたこと、設計・施工時点で特定天井に関わる確定的な技術的知見があったと言い難かったことなどから、検証委は「設計・工事監理者および施工者の過失を認めるのは困難」とした。ただし実際に被害が発生したことから、無過失責任である施工者の暇痕担保責任は問われるべきだと結論付けた。
 市は報告書を受け、設計者・施工者と復旧方法について協議に入った。市民の声を受け、復旧工事を中断して現場保全を図ったため、復旧が宙に浮いていた。市によると、現時点では工事計画はまとまっていない。
 安井建築設計事務所は本誌の取材に対し、「報告書を受け止め、改善に向けて施工者と協議を進めたい」と回答した。 (池谷和浩=ライター)

〔図〕給食センター天井損傷問題の経緯
2013年3月5日 設計打合せ。耐震天井の必要性、場所およびグレードについて鳥栖市と安井建築設計事務所とで協議
3月12日 鳥栖市から安井建築設計事務所に連絡。ランチルームの非構造部材についてAランクとすることを通知
6月28日 安井建築設計事務所が作成した意匠図で、「天井面は水平化速度1Gに耐えるように壁際および天井面の補強(斜材や耐震クリップなど)を施し、落下防止対策を行うこと」と記されている
7月24日 鳥栖市給食センター新築工事に着手
8月5日 改正建築基準法施行令が公布
8月7日 文部科学省が学校施設における天井落下防止対策のための手引きを発行
14年2月 軽鉄・ボード工事施工計画書で、安井建築設計事務所作成の設計図書および特記仕様書に従うこととされた
3月 この頃より、随時、天井軽鉄工事が始まる
4月1日 改正建築基準法施行令が施行 この頃からボード工事が始まる
4月15日 軽量鉄骨天井下地(耐震部)施工状況の確認検査。安井建築設計事務所から「耐震天井部、クリア不足」の指摘あり
4月22日 指摘されたクリアランス不足の是正処置
5月 この頃、天井軽鉄工事およびボード工事終了
8月22日 鳥栖市給食センター新築工事が終了
16年4月16日 熊本地震の本震が発生。天井部の損傷が確認される
17年2月5日 第1階検証委員会(6月までに計6回開催)
6月16日 検証委員会が調査結果を市長に報告
(資料:鳥栖市学校給食センター被災検証委員会の資料をもとに本誌が作成)


ソース :
日経アーキテクチュア 2017_7-27
このページのトップへ