東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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熊本地震の地震動データを捏造か
 熊本地震の本震で、大阪大学などの研究チームが熊本県益城町て観測したとされる地震動データに捏造疑惑が浮上した。データ公開が中止され、関係者に波紋が広がっている。大阪大学などは事実関係の調査を開始した。

 2016年4月に発生した熊本地震で、大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻の秦吉弥准教授(当時は助教)が熊本県益城町で観測したとして発表した地震動のデータに、捏造の疑惑が持ち上がっている。観測結果から算出した気象庁計測震度が史上最大とみられる6.9を記録したデータも含まれる。土木学会に17年9月下旬、観測データが不自然だとする匿名の通報が寄せられたことが発端となった。
 大阪大学は10月4日、日経コンストラクションの取材に対して「事実関係を調査中で、それ以上は話せない」と答えた。当該データをよりどころに構造物の耐震化や地盤構造の解明に取り組んできた研究者や実務者は多く、波紋が広がっている。
 以下では、データの観測から疑惑の内容まで、時系列で追っていく。
 秦准教授は16年4月14日夜の前震を受けて、翌15日午前に現地入り。余震観測を目的に15日午後、益城町内の3カ所を臨時観測点として選び、地震計を設置した。
 地点1は益城町役場の敷地内。同役場の1階には県の地震計があり、前震や余震などの記録を自身の地震計と後から照合できるように選んだとみられる。地点2は益城町の寺迫交差点付近。前震によって道路盛り土が崩れるなどの被害が生じた場所だ。地点3は前震で家屋の倒壊が集中した住宅地の一角を選んだ。  3カ所に地震計の設置を終えた直後の16日未明、本震が発生した。各地震計は強い地震動を捉え、貴重なデータをもたらすはずだった。
 秦准教授らは16年8月、本震の観測結果を米地震学会に発表した。秦准教授を筆頭著者とし、後藤浩之・京都大学防災研究所耐震基礎研究分野准教授、吉見雅行・産業技術総合研究所地震災害予測研究グループ主任研究員を共著者とする論文だ。併せて、京都大学防災研究所のサーバーに「臨時観測点本震記録」として波形データも公開した。
 論文などによると、本震の観測データには以下の特徴があった。
 疑似速度応答スペクトルを見ると、3地点とも東西方向の周期0.9秒付近が卓越している。木造住宅の倒壊を引き起こす周期1~2秒の「キラーパルス」に近い成分だ。
 周期0.5~1.2秒付近において、3つの地点とも1995年の兵庫県南部地震で観測した「JR鷹取」や、2004年の新潟県中越地震で観測した「川口町川口」の記録を大きく上回る。特に地点3では、東西方向の周期0.9秒付近に850cm/秒という突出したピークが表れる。従来では考えられないような強い揺れが生じていたことになる。
 多くの家屋が倒壊するような強い地震動を直接観測した記録は珍しい。それゆえ、多くの研究者や実務者が、地震の被害などを解明するための材料として、秦准教授の観測データを活用した。  例えば、国土交通省と建築研究所が16年5月に設置した「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」(委員長:久保哲夫・東京大学名誉教授)は、益城町で2000年以降に完成した比較的新しい木造住宅が倒壊した原因を探るため、実際の住宅をモデル化して時刻歴応答解析を実施。住宅の近くで観測した地点3の観測データを入力地震波として使い、「被害状況を再現できることが分かった」と結論付けた。
 また、米地震学会での発表論文の共著者である京都大学の後藤准教授は、強い揺れが生じたメカニズムを探るため、益城町の地盤について研究。想定した地盤を通して地表面に伝わる地震動と秦准教授の観測データとが整合することを根拠の1つとして、地盤の特性を論文にまとめていた。

 秦准教授の観測データに対し、土木学会地震工学委員会の委員長を務める澤田純男・京都大学防災研究所教授宛てに匿名の通報が寄せられたのは17年9月25日のことだ。
 匿名の通報者は、防災科学技術研究所が益城町内に設けている観測点「KiK-net益城」の記録と比較して、秦准教授の観測データに不自然な点があることを指摘した。KiK-netは同研究所が全国約700カ所に整備している強震観測網で、KiK-net益城はその1つ。地点1、2、3から北に700mほど離れた場所にある。
 地点1、2、3のフーリエ振幅スペクトルと、KiK-net益城のフーリエ振幅スペクトルの比を、南北方向と東西方向でそれぞれ計算した結果、各地点で両方向の比がほとんど一致した。フーリエ振幅スペクトルとは、様々な周期の波が混ざり合った地震波を分解して、周期ごとの強さを表したものだ。
「かなり大きなレベルの地震動が対象であり、表層地盤はそれなりに非線形化していることを想定すると、各地点の方向別に相関分析をした結果が一致するというのは、極めて特徴的と考えられる」。匿名の通報者はこう指摘している。さらに、周期0.03~0.05秒におけるフーリエ振幅スペクトルの比が、地点1、2、3とも共通してほぼ横ばいの直線で一定していることも判明した。
 こうした指摘からうかがえるのは、秦准教授が観測したとするデータが実際の計測で得られたものではなく、KiK-net益城で記録した地震波形を基に人為的につくられたデータである可能性が高いということだ。KiK-net益城の地震波形データは、本震発生直後の早い段階から防災科学技術研究所のウェブサイト上に公開されていた。

 匿名の通報者の指摘を受けて、京都大学の後藤准教授は9月28日、自身のウェブサイトで経緯を説明。「問題のあるデータが流布される事態となり、その一端を担ったことは疑いのない事実」と謝罪した。
 後藤准教授によると、16年12月にも別の通報者から「P波初動までの信号が他の記録と比較して不自然なものではないか」という指摘があった。しかし、「地震計固有の応答特性かもしれない」と考え、観測データを精査していなかったという。後藤准教授は、自身が筆頭著者となった関連論文の取り下げ手続きを順次、進めていくとしている。
 産業技術総合研究所の吉見主任研究員も9月29日、自身のウェブサイトを更新。「初期微動部分について、高周波数成分が少ないように感じていた」ものの、「検証しないままとしてしまった」と弁明。「(観測データを公表した論文の)共著者として公開データの不自然さに気づかなかったことを大いに反省しております」とのコメントを掲載した。
 同研究所は10月3日付で予備調査委員会を設置し、独自の内部調査を開始した。本調査に着手するかどうか、30日以内に結論を出す。
 大阪大学の秦准教授は10月13日時点で、日経コンストラクションの取材に応じていない。(瀬川滋=日経コンストラクション)


研究者の見解
研究の礎を揺るがした責任は重い
 熊本県益城町の臨時観測点の地震動は、木造家屋の倒壊率が最も高かった被災地で計測した世界的にも貴重なデータだった。同データを「事実」として研究を進めた研究者は多い。積み重ねた検証は振り出しに戻る形となっている。(聞き手は江村英哲)



家屋倒壊の研究が振り出しに戻った
高山峯夫
福岡大学工学部建築学科教授

 日本建築学会は熊本地震を受けて災害調査委員会を設置し、2016年5月に被害の大きかった益城町の悉皆調査を実施した。町役場を中心とした調査範囲は、臨時観測点を網羅するように定めた。地震動のデータがあれば、「建物被害と地震動成分の関係を分析できる」と考えた。しかし、臨時観測点のデータを使った研究は止めている。(防災科学技術研究所の)KiK-net益城のデータのみで検証するしかない。
 臨時観測点のデータで特に重視していたのがTMP3。木造家屋の倒壊率が高かった県道28号沿い南側に設置された観測点だったためだ。なぜ益城町の同地区に被害が集中したかを解き明かすには、地盤構造の影響を分析する必要があった。そのためにもTMP3のデータは非常に重要だったのだ。研究は振り出しに戻ってしまった。データが不正だとしたら、「なぜ控造したのか」という動機が知りたい。(談)



政策に関わりSTAP問題より責任重い
林康裕
京都大学大学院工学研究科教授

 熊本地震では建物に甚大な被害が発生した。建物の応答解析をする場合、観測した地震動のデータが基になる。研究者の思考の礎は「観測記録なのでデータは正しい」という信頼だ。データという事実に仮説が近づくように検証を重ねるのだ。だが、データが不正だったとすれば、多くの研究者が惑わされ、時間を浪費したことになる。 私が指導する大学院生も、このデータを参考にしたため、論文の一部を取り下げた。
 もしデータが控造されていたならば、STAP細胞間題より責任は重い。日本の防災の在り方にも影響を与えるためだ。人命に関わる可能性もある。既に当該データを使ったテレビ番組などが放映され、視聴者に誤った先入観を植え付けた恐れもある。地震発生から1年半で問題が発覚したのは不幸中の幸いだったかもしれない。長年にわたってこのデ一夕を使用していたら、誤った事実が定着していた。(談)



再発防止には倫理教育の徹底を
纐纈一起
東京大学地震研究所教授

 熊本地震のデータ捏造疑惑は、地震計の不調などの可能性もある。まだ、断定はできない。ただ、京都大学の澤田純男教授が、土木学会の了承を得ずにこの問題を公表されたのは、事の重大性を鑑みての判断だと思われる。世界的に見ても地震動データの不正は初めてではないか。バイオテクノロジーなど、研究者の競争が激しい分野ではデータの捏造はしばしば聞かれるが、とうとう地震工学の分野でも起こったかと驚いた。
 地震動の記録は波形で示され、その中に観測者の作為があったとしても、気付きにくい面がある。地震の記録は公的機関のデータがあるため、通常はデータを疑う必要はない。しかし、研究者による計測データに不正があるかどうかを検査していては労力が大変だ。再発防止に向けた効果的な手立ては少なく、倫理教育といった基本を徹底するしかないだろう。(談)



ソース :
日経アーキテクチュア 2017_10-26
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