東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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ぎふメディアコスモス悩ます「8つの不具合」
岐阜市の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」では竣工から30回の漏水が発生するなどトラブルが相次ぐ。設計者と施工者は11月16日の会見で、建物を悩ます「8つの不具合」について現状と対策を説明した。

 相次ぐ不具合に発注者の岐阜市はしびれを切らしている。
 岐阜市の図書館複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」では、2015年4月から17年10月まで2年半の間に、通算で30回の漏水が発生した。「設計者と施工者による直接の説明が必要」との市議会の決定を受け、設計・監理者を務めた伊東豊雄建築設計事務所と施工者の戸田建設は、11月16日に共同会見をメディアコスモス館内で開催。不具合の現状と対策について説明した。
 設計者と施工者は暇庇担保期間内に不具合に対処するとの姿勢を示す。伊東事務所の東建男取締役は、「初期不良はどんな建物でも起こり得る。1つひとつ直すことで建物の健全性が生まれる。不良部分は暇庇担保期間内に直しきる」と説明した。
 戸田建設名古屋支店の曽根原努・建築施工担当支店次長は、「既に対策を施した不具合については、暇庇担保の期間は経過観察を継続する。期限間際で不具合が発生した場合は、期間後も原因を調査して岐阜市や設計者と対応していく」と話した。

 メディアコスモスの暇庇担保期間は19年2月までの4年間だ。民法637条では暇庇担保期間は1年だが、強行法規(当事者間の合意なしに適用)ではないため、期間は契約で定めることができる。市の標準契約約款44条では、建築主体工事の請負契約での瑕疵担保期間について、「コンクリート造等の建築等または土木工作物等にあっては、引き渡しの日から4年」と定めている。
 この期間の延長が、施設を運営する市と設計者、施工者の間で争点となっている。
 市は16年10月に瑕疵担保期間の延長を求める書面を設計者と施工者に送っている。メディアコスモスの大塚直哉館長は、「市の標準契約約款44条では『暇庇が受注者の故意または重大な過失により生じた場合には、請求を行うことのできる期間は10年とする』とのただし書きがある」と話す。市は重大な過失として雨漏りが該当すると主張する。
 戸田建設は17年3月に発生した2回の漏水について、「雨漏りを原因とする可能性を排除できない」として施工不良を認めている。原因は防水の仕様にある。複雑な曲面形状の屋根には樹脂皮膜の鋼板が敷かれている。接合部を帯テープで覆い、熟溶着することで、防水性を担保する。
 3月から5月にかけて実施した屋根の漏水調査では、4カ所で帯テープの剥離が見つかった。熱溶着の作業は平面部では機械を用いた施工となる。しかし、曲面部では職人の手作業に頼らざるを得なかった。  職人は工事現場に設置したモックアップで作業の練習を重ねたものの、熟溶着が不完全な部分が残った。施工直後の点検では不具合は見つからなかったが、外気に2年間さらされる間に帯テープが熟収縮を繰り返したことで、熟溶着が不完全だった部分に負荷が掛かって剥離が生じた。不具合が発生した場所は、ウレタン防水材での補修が完了している。
 会見では17年10月に理由不明の漏水が2回発生したと発表しており、曽根原支店次長は「今後もいろいろな事態が発生する可能性がある」と述べている。
 会見では、これまでに発生したトラブルについて、設計者と施工者が原因と対応策を説明した。報告された不具合は8つある。「屋根水たまり」「2階天井内部の結露による漏水」「屋根鋼板の不具合による漏水」「ルーフドレンと縦どいの接続部からの漏水」「屋根下地材のさび」「本の蔵(書庫)ガラスのひび割れ」「1階搬入ヤードの漏水」「南側外壁ガラスの破損」だ。
 新たに判明したトラブルの1つが、「ルーフドレンと縦どい接続部からの漏水」だ。8月に発生した台風5号による強風で屋根が動き、ルーフドレンと縦どいの接続部に隙間ができたことが原因とみられている。  ルーフドレンは木材で組み上げた屋根の曲面マウンドの“谷”の部分に設置される。集まった雨水は鉄骨柱の内部を通る縦どいに流れ込む仕組みだ。ルーフドレンは取り付け用の鉄板を通じて野地板に固定。縦どいとの隙間には止水材として接続用テープを巻いていた。
 しかし、台風による強風は想定以上の力を屋根に与えた。屋根面とルーフドレンが風で上下左右に動くことで、接続部に大きな負荷が掛かった。接続用テープが強風で動く屋根の重みに押しつぶされて隙間が発生。そこから雨水が屋根内に浸入して漏水したという。伊東事務所の東取締役は「ルーフドレンは一般的な工法を用いていた」と説明する。
 メディアコスモスの木造屋根について、伊東事務所は変形の大きさを鉄骨造と同等の設計とした。東取締役は「屋根形状が複雑だから浸水が発生したわけではない。鉄骨造でも強風で屋根は動く」と話す。屋根の変形はスパンの中央で発生しやすく、(ルーフドレンのある)鉄骨柱の固定部分は変形が小さいため、一般的な工法を選択したという。
 戸田建設は屋根にある全てのルーフドレンの接続部に浸水対策を施した。既存ドレンにはめ込むように改修用ドレンを設置。縦どいと改修用ドレンの間に止水材を充填して、接続部には雨水が触れない処置を施した。実績のある修繕手法とされ、メディアコスモスでは全てのルーフドレンに取り付けた。曽根原支店次長は「屋根の全面点検で浸水がないことを確認した。今後は同じ原因での漏水はない」と話す。

 会見では、漏水のほかに、ガラスが破損するトラブルが複数発生していることも明らかになった。15年11月と17年5月に1階にあるガラス張りの書庫「本の蔵」で、ガラスにひび割れが見つかった。原因はガラスを取り付けるコンクリート下がり壁の溝の深さ不足だ。新築の建物は部材がたわむ「クリープ現象」が発生する。このたわみ幅を見越して設計ではガラスとコンクリート壁の間に30mmの空き寸法を確保していた。しかし、空き寸法が足りなかったことで、ガラスと壁が接触してひび割れが発生した。対応策として、書庫のガラスを全て取り外し、採寸し直してガラスをはめ込んだ。16年10月には南側外壁でもガラスが割れた。日射熟による熱膨張によって外壁を覆う鋼板がはらみ出し、サッシごとガラスを押し出して破損したのが原因だった。一般的に熟による鋼板のはらみは、屋根などで発生しやすい。メディアコスモス南側外壁では、表面温度の上昇による熱膨張は想定外だったという。伊東事務所の古林豊彦取締役は、「南側外壁は1スパンの面積が大きかった。そのため鋼板が熱膨張の影響を受けた可能性がある」と説明する。この間題に対しては、南側外壁で表面温度が高くなりやすい10スパン分の鋼板を補強する修繕を実施した。

 開館前から現在まで続く漏水について、設計者と施工者は対策を重ねてきた。特に天井内の結露を原因とした計24回の漏水については、原因となる湿気を抑えるため、屋根には 北側と東側、西側に3基の換気装置を一時的に設置している。
 この装置は不具合の1つである「屋根下地鋼材のさび」の進行を抑える効果もある。天井内が鉄がさびやすいとされる湿度60%を超えないように調整しているのだ。
 現在は換気を継続しつつ定期点検を継続している。天井内での結露は確認されておらず、電気亜鉛めっきを施した下地鋼材のさびは進行していないという。換気装置は常設化を検討。設置費用などは設計者と施工者が負担する。
 さびが取り除かれたわけではないが、「さびは下地鋼材の構造的な強度に支障があるわけではない」と伊東事務所は説明する。下地鋼材の厚さは1.6~2.3mm。JIS(日本工業規格)による製品厚さの許容差(±0.1~0.5mm)を超える腐食は確認されていないためだ。
 同事務所の古林取締役は会見で「不具合の発生についてはご心配をおかけしている。メディアコスモスは今までにない木造屋根として設計し、施工の難度も高い。課題を克服して完成したが、設計者、施工者で想定しきれなかった事象が発生した。その都度、市と協力して真撃に対応してきた」と語った。
 しかし、相次ぐ不具合に、発注者である市は不信感を拭えないでいる。細江茂光市長は11月21日の定例記者会見で、「下地鋼材のさびは構造上問題がない」とする設計者、施工者の意見に対して、「納得がいかない」と発言した。そのうえで、「直ちにさびを落として再塗装し、二度と起こらないようにしてもらわなければいけない」と述べた。
 30回もの漏水が報告されれば、市の要求は心情的に理解できる。しかし、屋根内の空間は高さが86~614mmしかない。吸音用のグラスウールも敷き詰められている。現実的な対応を考えれば、屋根内に職人が入って再塗装する作業は不可能だ。
 設計者、施工者は下地鋼材のさびによる強度への影響がないことを示すため、実証実験を進めながら市に説明する資料の作成を検討しているという。
 古林取締役は、「物理的には屋根を剥がせばさびが発生した下地鋼材の再塗装は可能だ」と説明する。  しかし、その実施は容易ではない。「もし、再塗装するならば、施設をしばらく閉館するなどの対応を取らざるを得なくなる」(江村英哲)


設計者に聞く
古林豊彦 伊東豊雄建築設計事務所取締役
不具合の原因は木造屋根ではない

 ぎふメディアコスモスは消費する一次エネルギーを2分の1に抑える(1990年の同規模建築との比較)建築を目指して設計した。(発注者の岐阜市は)天井についてメンテナンスが不要と捉えているとのことだが、プロポーザルの段階でも、建物コンセプトとして「メンテナンスフリー」であるとは表現していない。天井内では結露が発生した。実施設計の段階では天井に点検口を設けるように図面に記載していた。メンテナンスなしでよいという設計ではなかった。
 スプリンクラーや配管の専門工事会社、設備設計者などと細かく協議を進めるなかで、「点検口は必要ないのではないか」という結論に達した。そこで最終的に点検口を設けなかった。室内から天井への水蒸気の流入は、設計時にもある程度は見込んでいた。ただ、しっかりと隙間を塞げば無視できる流入量だと考えていた。
 結果的に天井内に無視できない量の水蒸気が流入して結露が発生した可能性がある。結露については「建材の初期含水」が原因となることもあるが、「室内から流入した水蒸気」とどちらの割合が大きいかは立証できていない。現在は送風機で天井内の湿度を安定させており、全体で12ヵ所ほど点検口を設けて経過観察を続けている。
 ルーフドレンと縦どい接続部からの漏水については、屋根が木造だったから生じた不具合とは考えていない。屋根の変形については鉄骨造と同じくらいの大きさで設計している。強度もモックアップを作成して検証した。木材の組み方からしても、屋根の動きが少ない構造体となっている。ただ、約7000㎡と大きな屋根面となるため、台風などの強風を受けた場合には、しわ寄せ的な力が局所的に掛かる場合がある。
 屋根下地鋼材のさびについては、心理的に許容できるかどうかという問題があるだろう。物理的に屋根を剥がして施工するなら、さび取りや再塗装は可能だ。そのためには施設をしばらく閉館しなければならない。
 さびについては構造上の強度に問題はない。そのことを岐阜市に対して実証的に説明できる材料の検討を戸田建設と進めている(談)



ソース :
日経アーキテクチュア 2017_12-14
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