東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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札幌支援施設火災の教訓
 死者11人を出した札幌市の自立支援施設の火災は、低所得高齢者の居住問題を浮き彫りにした。老人ホームなどの入居費用を払えない高齢者の住居環境を安全なものにするため、実態の把握と対策が急務だ。

1月31日午後11時半ごろ、札幌市東区の自立支援施設「そしあるハイム」から出火し、木造2階建て、延べ面積404.19㎡の建物を全焼した。午後11時40分に通報を受け、8分後に消防隊が到着した時には、すべての開口部から炎と煙が噴き出していた。消防活動によって火災の勢いが弱まったのは、2月1日午前5時16分だった。
 そしあるハイムを管理していたのは、生活困窮者の自立支援に取り組む合同会社「なんもさサポート」(札幌市北区)だ。生活保護受給者など40~80歳代の16人が入居。火災により、2階に入居していた11人のうち9人、1階に入居していた5人のうち2人、計11人が死亡した。近年、発生した社会福祉施設の火災の中でも、特に被害が大きい。
 そしあるハイムでは各部屋に熱感知器があったが、スプリンクラーはなかった。生存者の証言では、警報が鳴り、1階厨房横の居室から出火したのを見たが、すぐに停電になったという。2階廊下の東側に非常口があり、避難用の縄はしごを設置していたが、使用されなかった。
 消防は2月8日時点で出火原因などを調査中だ。防火対策など詳細については今後の調査を待つ必要があるが、専門家は11人死亡という大きな被害となった原因の1つとして1階天井裏を伝って延焼、煙が充満した可能性を指摘する。
 木造建築物の防火に詳しい長谷見雄二・早稲田大学理工学術院教授によると、古い建物や長屋で発生する火災は、天井裏を伝って急激に炎と煙が広がることで被害が大きくなる傾向にある。2016年12月に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災でも、出火元から4軒先まで小屋裏が燃え抜けた。そしあるハイムは、天井裏でつながっている範囲が広い可能性があるとみる。

 火災を受け、国土交通省は類似の被害を防ぐため、木造の寄宿舎などの違反対策の徹底を図るよう、2月1日に各都道府県に通知した。対象は、1975年以前に建てられた木造2階建て以上で延べ面積150㎡以上の寄宿舎、下宿だ。
 建築基準法の違反を把握している建物や長期間立ち入り検査していない建物を優先する。違反が確認できた建物については、消防など関係部局と連携して是正指導に当たる。
 総務省消防庁も2月1日に、各都道府県の消防防災主管部長などに宛てて、寄宿舎や下宿の防火対策への注意喚起を徹底するよう通知した。対象施設は国交省の通知と同様で、「廊下が開放型となっていないなど、比較的火災危険性が高いと考えられるもの」「用途変更時に建築確認を受けなかった可能性が高いと考えられるもの」を優先する。
 消防法令違反の是正指導を徹底するほか、施設管理者などに消防設備の適切な維持管理、避難経路の確保などを指導する。対象である寄宿舎や下宿が、老人ホームやデイサービスセンターなどに該当する可能性がある場合は、福祉部局と連携するよう求めた。

 そしあるハイムは消防法上、スプリンクラーの設置が不要な「下宿」とされていたが、設置が必要な有料老人ホームだった疑いがあるとして、札幌市は実態を調べている。
 市建築指導部によると、建築時の記録はないが、1968年に店舗から旅館への用途変更を届け出ている。最後の届け出は、1974年に建物東側を増築した際の確認申請だ。その後、2005年ごろから使用実態が変わったとみられるが、旅館から寄宿舎などへの用途変更の記録はない。
 一方、消防はそしあるハイムの用途を下宿と判断し、消防法上の寄宿舎、下宿、共同住宅に該当する建物として指導していた。最後の立ち入り検査は16年12月で、消火器、自動火災報知器、漏電火災警報器、避難器具を設置しており、法令違反がないことを確認していた。
 そしあるハイムでは入居者に食事を提供し、60歳以上の入居者が多かったことから、有料老人ホームに該当した可能性がある。消防や保健所は定期的な立ち入り検査で、こうした実態は把握していたが、市の保健福祉局へ連絡していなかった。
 一方、保健福祉局は16年1月に外部から連絡を受け、有料老人ホームの疑いがある施設と知った。16年8月から17年8月にかけて、施設に任意の調査票を4回送付したが、回答はなかったという。
 札幌市の秋元克広市長は2月2日の会見で、「いろいろな規制を厳しくして、こういう施設がなくなったときに、高齢者の人たちの行き場があるのだろうかということを、社会システムとして考えていかなければならない」と語り、実態把握や課題の整理を進める考えを示した。
 川崎市の簡易宿泊所で15年5月に死者11人を出した火災など、高齢者や生活困窮者が居住する施設での火災事故は後を絶たない。札幌の自立支援施設の火災で、その間題が再び浮き彫りになった。住まいの安全をどう保障するか、実態を踏まえた対策が求められる。(森山敦子)


〔図1〕相次ぐ高齢者向け施設の火災
出火年月日 出火場所 用途 事業所名 死者数 負傷者数 出荷原因
2006年1月8日 長崎県大村市 社会福祉施設 やすらぎの里さくら館 7 3 マッチ・ライター
07年1月20日 兵庫県宝塚市 雑居ビル カラオケボックス(ビート) 3 5 ガスコンロによる長期加熱
07年6月19日 東京都渋谷区 雑居ビル シエスパB棟 3 8 天然ガスに引火
08年10月1日 大阪市 雑居ビル 桧ビル(個室ビデオ店キャッツなんば) 16 9 放火の疑い
09年3月19日 群馬県渋川市 社会福祉施設 静養ホームたまゆら 10 1 不明
10年3月13日 札幌市 社会福祉施設 グループホームみらいとんでん 7 2 ストーブ
12年5月13日 広島県福山市 旅館・ホテル ホテルプリンス 7 3 不明
13年2月8日 長崎市 社会福祉施設 グループホームベルハウス東山手 5 7 加湿器
13年10月11日 福岡市 病院 安部整形外科 10 5 トラッキング
15年5月17日 川崎市 旅館・ホテル 吉田屋 11 17 放火
18年1月31日 札幌市 下宿 自立支援施設そしあるハイム 11 3 調査中
近年発生した死傷者数の多い主な火災。被災の大きな火災が起こるたびに消防法を見直し、スプリンクラーの設置基準など、防火規制を強化してきた(資料:総務省消防庁の資料などを基に本誌が作成)


識者に聞く
長谷見雄二 早稲田大学理工学術院教授
高齢者住居の問題解決こそが本質

 札幌市自立支援施設の火災を踏まえて考えるべきなのは、低所得高齢者の受け皿となる施設の安全対策をどのようにすべきか、という点だ。
 高齢者住宅などでは一般的に、出火率が高い。介護の有無にかかわらず高齢者の多い住宅の実態を、感知器を消防に連動するなどして消防が把握しておく必要があるのではないか。日光で温められた熱感知器が反応するなど、火災以外での出動が増えることもあるが、設置箇所を工夫するなどで対応できる。119番通報を待たず、すぐ駆けつける体制をつくれば、入居者の多くが死亡するような火災事故は減らせるだろう。 安全性を高める有効な方法の1つとして、可燃物量のコントロールがある。防炎製品の使用や居室に置く可燃物の量を徹底して管理することなどが出火率を下げるのに有効だ。居室の可燃物を減らせば、爆発的に延焼するフラッシュオーバーのリスクが下がる。避難できる状態からフラッシュオーバーが発生するまでの時間は短い。火炎の横で貴重品を探すなどの避難の遅れにつながる行動もコントロールできる。
 低コストで住宅などを整備するには既存建築物の転用が有効だが、既存建築物を今の基準に合わせることは技術面でもコスト面でも課題が多い。老人ホームなどの安全性を高めるために、スプリンクラーの設置基準が厳しくなったが、既存建築物への設置工事は難しい。設備投資額が増えれば入居費用を上げざるを得なくなるからだ。場当たり的な規制強化によって、低所得者の入居が困難になると、行政の目の届かないところで施設が運営され、本来の目的である安全性を確保することができなくなる。
 既存建築物の転用に当たっては、避難時間を稼ぐための防火対策など、低コストで安全を確保する効率的な技術の開発、基準化が必要だ。既存建築物の防火対策の難しさは老人ホームなどだけの問題ではない。伝続的建造物や木造密集地区の大規模火災を防ぐ観点からも、重要な横討課題だ。(談)



ソース :
日経アーキテクチュア 2018_2-22
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