東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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台湾東部・花蓮地震
 2月6日午後11時50分(現地時間)、台湾東部をマグニチュード(M)6.0の地震が襲った。 死者は17人。震源近くの花蓮市内では、断層近傍の高層ビル4棟が倒壊・崩壊した。 本誌は2月10日から2日間、被災地を緊急取材。倒壊の原因を探った。 和田章・東京工業大学名誉教授の見解を交えて被害の実態を報告する(菅原由依子) 高層ビル「雲門翠堤大楼」は、遠目からも分かるほど大きく傾いていた。敷地の周囲には規制線が張られている。現地に着いたときは行方不明の夫婦が建物内で発見され、消防隊や軍隊が遺体を運び出す瞬間だった。
 2月6日に台湾東部で発生した地震は、花蓮市や宜蘭県南墺で最大震度7級を記録(日本の震度7に相当)。死者17人のうち、14人は雲門翠堤大楼にいた人々だった。「美崙渓」という川沿いに立つこの建物は、地下1階・地上12階建てで、鉄筋コンクリート造。1994年に竣工し、1階にレストラン「阿官火鍋」、2、3階にホテル「漂亮生活旅店」、4階以上に住居などが入っていた。 死者が多く出たのは2階南側に並んでいたホテル客室だ。北東側から見ると、2階の梁があらわになっていた。1階の平面図を確認すると、東側のレストランにはほとんど壁がない。それに対し、西側は壁の多い密なつくりだった。
 構造エンジニアであり、台南市結構工程技師公会の常務理事を務める施忠賢氏は、現場を調査して建物の倒壊メカニズムを3ステップで推測した。
 地震発生の初期は、建物北東側の低層階で柱に圧縮力がかかった。しかも1階は東西で壁量などのバランスが悪かったので、反時計回りに偏心荷重がかかった。そのときに柱などで最初の損傷が生じた(Stepl)。
 次に、客室や集合住宅が連なる上層階は壁が多かったことから、建物上部は剛性を保ったまま南西側へ揺らされた。そこで南西側の柱に圧縮力がかかると同時に、北東側の柱が引っ張られて破断(Step2)。最後に地下室へ1~3階が沈み込んだ(Step3)という見立てだ。
 現場を調査した和田章・東京工業大学名誉教授も、「この建物は低層部が相対的に弱い構造をしていた。偏心によるねじれ振動も起こったと考えられ、剛性と強度におけるバランスの悪さが被害を招いた」と言う。
 さらに図面を見て「12階建ての建物としては柱の間隔が広い。800mm角の柱だとしたら、過剰な量の主筋が入っていたように見える」と、設計や施工の問題を指摘した。
 市内で大きく倒壊した建物は他に3棟あり、いずれも10階前後の高層ビルだった。1976年竣工の老舗ホテル「統帥大飯店」では、男性1人が死亡。建物は地下1階・地上11階建てで、通りからセットバックしていた1、2階が層崩壊した。
 台湾の研究機関である国家地震工程研究中心の資料などによれば、2012年に耐震改修を施していた。倒壊への影響はまだ明らかでない。
 市内中心部の北東側では、2棟のマンションで低層部が層崩壊した。「白金双塁大楼」というマンションと、その向かいに立つ11階建てのマンションではいずれも1階駐車場が崩壊した。2棟の住民たちは無事に救出でき、死者は出ていない。
 国家地震工程研究中心の資料によると、倒壊した4棟の高層ビルはいずれも花蓮市を南北に走る米崙断層の近傍で発生していた。市内を歩くと、断層から離れたエリアの建物や、中低層の建物には外環上、大きな被害は見受けられなかった。
 かつて台湾では1999年9月21日に「集集大地震」が発生し、2000人以上の人命が奪われた。それを機に、耐震設計法が見直された経緯がある。活発な米崙断層が地下に走る花蓮市は台湾のなかでも厳しい規制がかかっていた。
 だが4棟の高層ビルは、設計や施工の問題のほか、築20年以上たつこと、卓越した長周期成分を持つ地震波を受けたことなど数々の要因が重なり、倒壊した可能性がある。今回の花蓮地震を教訓に、日本においても断層近くに立つ既存高層ビルなどの安全性を再確認する必要があるだろう。


地震の特徴
東西方南で2~3砂の周期が卓越
 台湾中央気象局の発表によると、2月6日に台湾東部の近海で発生した地震の震源の深さは約10km。震源近くの花蓮市や宜蘭県南襖では、最大震度7級(日本の震度7に相当)を観測した。  花蓮市で記銀された地震動の最大加速度は、南北方向に434ガル(cm/秒2)、東西方向に397ガルだった。公表された加速度応答スペクトルを見ると、東西方向で2~3秒の周期が卓越していることが分かる。
 日本の国土地理院は、地球観測衛星「だいち2号」に搭載したレーダーのデータを解析。その結果、花蓮市の地下を南北に走る米崙断層から、嶺頂断層の北部にかけて約15kmにわたって断層沿いに顕著な地殻変動が見られたという。
 米崙断層の上には花蓮市の中心部が広がっていた。建物の倒壊や道路舗装のひび割れ、橋脚の崩壊など目立つ被害は、いずれも断層近傍に集中していた。


耐震工学の専門家に聞く
和田章 東京工業大学名誉教授、日本建築学会元会長
互いに世界の災害から学ぶべきだ

 2月6日、台湾東部の花蓮市で地震が起こり、4棟の大きな鉄筋コンクリート造の建物が倒れた。台湾のなかでも花蓮市は地震が多く発生するエリアで、設計用地震動は台北と比べると1.5倍の大きさで設定されている。そうした厳しい規制の効果もあったのか、今回の大地震を受けても市内にある5階建て以下の中層建築物に大きな被害はなく、花蓮の街は平常であるように見受けられた。  2月10日から2日間かけて市内の被災現場を調査したところ、「雲門翠堤大楼」が倒壊した原因として次のような問題点が推測された。
 まず図面を見ると、12階建ての建物としては柱のスパンが広い。低層部に大きな空間をとる設計で、壁など耐震要素が偏在していたことでねじれ振動が起こった可能性がある。
 施工にも問題があったように思う。破断した柱を見ると、柱の軸強度と曲げ強度を確保しようとしたことで、過剰な量の主節を入れていた。過剰な量の主筋を入れると、周りを囲むコンクリートの主節を抑える能力が低下し、上下から圧縮力を受けた場合に柱が壊れやすくなる。
 さらに主節を拘束するはずの帯筋が少なく、帯筋の端部は90度フックで外れやすくなっていた。主筋が同じ高さで重ね継ぎ手されていたことも、上下で引っ張られたときには一斉に同じ場所で主筋が抜けてしまうので気を付けなければならない。
 倒壊を招いたと思われるこうした複数の原因は、日本の新耐震設計法に書かれている内容ばかりであり、世界の常識としてほしい。
 ただし、花蓮市の被害を調査して1点気掛かりなことがあった。倒壊した4棟は10階建て前後の階数で、ひび割れが起こる前の固有周期は1秒前後と思われる。一方、断層近くで観測された地震動の継続時間は18秒と短く、加速度応答スペクトルを見ると2~3秒の成分が大きく生じていた。それは台湾における設計基準の2倍近くに相当する。だが短周期成分は基準より小さい。詳細な検討結果が発表されるまで分からないが、4棟は長周期パルスの影響で倒壊したのかもしれない。

 日本では1978年の宮城県沖地震を受けて81年に新耐震基準がつくられた。しかし、95年の阪神・淡路大震災でそれが甘かったことが分かり、建築基準法をさらに厳しく改正した。 台湾の人々が日本の状況を知っていたか分からないが、人は足元に火が付かなければ動かないものだ。
 とはいえ、日本人も世界の災害をきちんと学べているとは言えない。災害は、自国だけで見ていたら数十年に1度しか起こらないかもしれないが、世界規模で見れば、毎年のように様々な場所で被害が起こっている。地震災害は自然災害といわれるが、多くの部分で、人々や社会の事前対策のなさが起こした人災と考えるべきである。私たちは、互いに世界の災害から学ばなければいけない。(談)



ソース :
日経アーキテクチュア 2018_3-8
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