東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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建基法改正案、大規模火災対策を強化
 政府は3月6日、建築基準法の改正案を閣議決定し、通常国会に提出した。市街地火災の被害低減に向けた対策、木造建築物に関する制限の緩和、既存建築物の用途変更に関する規制の緩和などが柱。通常国会で成立すれば、公布から1年以内に段階的に施行する。
 改正案では、相次ぐ大規模火災を踏まえ、防止策を盛り込んだ。木造住宅の密集地域で建て替えを促すため、一定の延焼防止性能がある建築物の建蔽率を緩和。また維持保全計画の作成などを求める建築物を、工場や倉庫などに拡大する。
 建蔽率の緩和は、2016年12月に発生した新潟県糸魚川市で発生した都市大火を踏まえた対策だ。準防火地域内で耐火建築物や準耐火建築物など、延焼防止性能の高い建築物を建てる場合に建蔽率を10%緩和する。
 糸魚川大火は準防火地域で発生。これまで準防火地域では耐火建築物などへ建て替えを促す制度がなく、老朽木造建築物の建て替えが進んでいない実態があった。

 併せて、東京23区など都市部で問題となっていた「重層長屋」について、接道規制を強化する。長屋は、1棟に複数世帯が住み、共用部を持たず各戸の玄関から直接道路に出る住宅だ。重層長屋とは、2階建て以上で総戸数が多い長屋を指す。
 現行法では、条例で接道規制を付加できる建築物の対象は、特殊建築物や3階建て以上の建築物などに限られていた。改正案では、袋路状道路にのみ接する延べ面積150㎡超の建築物(戸建て住宅を除く)に広げる。
 長屋は防火避難規定による制限が共同住宅より少なく、比較的安価な費用で建てられることから、重層長屋が増えている実態がある。旗ざお敷地に建てる場合、接道する幅員の狭さや居住者の多さから、火災時の避難や救助、消火活動が困難になると問題視されており、自治体から早急な対策が求められていた。

 改正案ではこのほか、建築物への木材利用促進策として、耐火建築物を義務付ける木造建築物の対象を見直す。現行制度の「高さ13m超または軒高9m超」から、「高さ16m超または4階建て以上」に引き上げる。新たな基準を超える木造建築物についても、消火活動や十分な空地の確保などを前提防火避難規定を緩和する基準を新設する。詳細は、政令や告示で定める予定だ。
 建築物の用途変更に関する規制緩和では、都市計画区域外などで既存建築物を用途変更する際に、確認申請が不要な面積の上限を100㎡から200㎡に引き上げる。さらに増改築などに該当しない場合、既存建築物の用途変更時に、既存遡及工事の完了が必要だったが、増改築などに該当しなくても、全体計画における最後の工事での基準適合を条件に、段階的に適合させることを認める。
 このほか、老人ホームなどの入所系福祉施設の容積率制限を緩和し、共用廊下などを算定基礎となる床面積から除外。東京五輪を想定し、興行場などの仮設建築物について、1年を超えて使うことを認める特例の創設などを盛り込んだ。(森山敦子)


建築基準法改正案のポイント
市街地火災の被害低減に向けた対策
53条3項 延焼防止性能を有する建築物の建蔽率緩和 防火地域では「耐火建築物等」、準防火地域では「耐火建築物等」もしくは「準耐火建築物等」とすれば、建蔽率を10%緩和できる。「耐火建築物等」「準耐火建築物等」として、耐火建築物および準耐火建築物同等以上の延焼防止性能を持つ建築物を政令で定める
53条5項 指定壁面線を越えない建築物の建蔽率緩和 指定壁面線を超えない建築物について、特定行政庁が認めた場合に建蔽率を緩和できる
43条3項 大規模重層長屋などへの規制強化 袋路(ふくろじ)状道路にのみ接している延べ面積150㎡超の建築物(戸建て住宅を除く)を、条例で接道規制を付加できる建築物として追加する
大規模倉庫火災防止に向けた規制強化
8条2・3項 維持保全計画の作成などを求める建築物の対象拡大 維持保全計画の作成を求める建築物の対象に、大規模倉庫など政令で定める特殊建築物などを追加する。国土交通大臣は、維持保全計画作成のための指針を定めることができる
9条の4 10条 所有者や管理者などへの保安上の指導・助言 これまで勧告・命令制度のみだったが、近隣からの連絡などで発見された保安上危険な部分について指導および助言を行う制度を新設する
木造建築物に係る規制の緩和
2条6号 「延焼のおそれのある部分」の定義見直し 外壁面と隣地境界線などとの角度に応じて延焼のおそれのない建築物の部分を告示で定め、「延焼のおそれのある部分」には該当しないこととする
21条1項 耐火建築物とする木造建築物の高さ基準緩和 高さ13m・軒高9m超だった基準が、高さ16m超・階数4以上に
消火活動を前提とした設計法の導入 政令で主要構造部の性能や検証方法を定め、告示で具体的な構造や仕様を定める
延焼を防ぐ空地で耐火建築物の適用除外 耐火建築物としなくても延焼しない空地の技術的基準を政令で定める
(旧24条) 特殊建築物の外壁・軒裏などの防火規制を廃止 防火地域・準防火地域外の指定された区域内で、木造の特殊建築物を対象とした、外壁・軒裏に係る防火構造の規制を廃止
26条、36条 大規模建築物の区画に関する規制見直し 防火床でも区画できることとし、設置や構造に関して必要な技術的基準を政令で定める
既存建築物の用途変更に係る規制の緩和
6条1号1項 建築確認を要しない特殊建築物の範囲拡大 都市計画などの区域外で、200㎡以下の特殊建築物は建築確認不要とする
27条1項 小規模な特殊建築物の防火避難規定の緩和 政令で定める基準(就寝用途を伴う場合は警報設備などの設置、階段の区画など)を満たせば、3階建てかつ200㎡未満の特殊建築物は耐火建築物としなくてよい
52条6項 老人ホームなどの容積率緩和 老人ホームなどの共用の廊下・階段などを容積率不算入とする
30条 長屋・共同住宅の界壁に関する規制見直し 天井の構造が、政令で定める遮音性能の技術的基準に適合し、国土交通大臣が定める構造方法などを満たす場合、界壁が小屋裏や天井裏に達しなくてもよいこととする
87条の2 用途変更に伴う既存遡及工事に関する制限を緩和 用途変更に伴う工事が増改築などに該当しない場合でも、特定行政庁の認定を受ければ、既存遡及工事を計画的・段階的に実施できるようにする
建築物の一時的な利用に対する緩和
85条6・7項 仮設建築物の設置期間の特例の創設 国際的な競技会に使うなど仮設建築物を1年を超えて使用する特別な理由がある場合、特定行政庁は建築審査会の同意を得たうえで、必要な期間を定めて許可できるようにする
87条の3 一時的な用途変更における緩和 災害があった場合に既存建築物を病院、住宅、学校などに一時的に転用する場合、特定行政庁が許可したときは、建基法の全部または一部の適用除外を認める
確認申請などの手続き簡略化
43条2項1号 接道規制の適用除外に係る手続きの簡略化 省令で定める基準を満たす道に接する建築物が一定の基準を満たす場合、接道規制の適用除外に関して建築審査会の同意を不要とする。省令で基準を定める
48条15・16項 用途規制の適用除外に係る手続き簡略化 住宅系用途地域内にある日常生活に必要な政令で定める建築物で、騒音対策など一定の措置を講じたものは、用途規制の適用除外に関して建築審査会の同意を不要とする
56条の2の1項 日影規制の適用除外に係る手続きの簡略化 日影規制の提供除外に関する特例許可を受けた建築物の増改築で、政令で定める規模の範囲内で増築などを行う場合は、特例許可を要しないこととする
18条2項 防火・準防火地域外で10㎡以下の公共工事は申請不要 防火地域・準防火地域外で、建築主が国、都道府県、建築主事を置く市町村である場合、10㎡以下の増築、改築、移転は建築主事に通知しなくてよいこととする
(資料:国土交通省の資料を基に本誌が作成)


ソース :
日経アーキテクチュア 2018_3-22
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