平成7年の阪神・淡路大震災では、建物の倒壊により幹線道路が分断され、緊急車両の通行が妨げられて、被害が拡大しました。緊急輸送道路は、震災時の救急救命活動の生命線となり、復旧・復興の大動脈として重要な役割を果たします。首都直下地震の発生が切迫していると指摘されている中、緊急輸送道路の重要な役割を確保するためには、路線全体にわたって沿道建物の倒壊により道路が分断されることを防ぐ必要があります。そのためには、緊急輸送道路沿道の建物の耐震化を早急に進めなくてはなりません。そこで東京都は、「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を3月に制定し、4月から施行することにしました。
■条例に基づく義務
義務の対象となる建物所有者は次のことが必要となります。
・「特定緊急輸送道路」の沿道にある「特定沿道建築物」の所有者は、平成23年10月以降、耐震診断や改修の実施状況を報告する。
・耐震診断を実施していない場合には、平成24年4月以降、耐震診断を実施する。
・耐震診断の結果、耐震性能を満たしていない場合には、耐震改修等を実施するよう努める。
・耐震診断や改修を実施した際は、その旨を知事に報告する。
これらの義務が履行されない場合には、建物の名称を公表されたり、罰金、過料が科されたりすることがあります。
■対象となる建築物(特定沿道建築物)
1. 敷地が
特定緊急輸送道路に接していること
2. 昭和56年6月1日施行の耐震基準改正前に建築された建物
3. 道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建築物(図)
■「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進する条例」スケジュール
23年 |
4月1日 |
条例施行 |
6月末頃 |
特定緊急輸送道路の告示(※1) |
10月1日 |
耐震化状況の報告書の提出開始(※2) |
24年 |
4月1日 |
耐震診断の実施義務化開始 |
※1:平成23年6月末頃に緊急輸送道路のうち特に沿道建物の耐震化を進めなければならない道路を「
特定緊急輸送道路」として告示されます。(6月28日に
特定緊急輸送道路が告示されました)
※2: 報告書の提出期間は10月から3ヶ月間とします。
■助成制度
耐震診断費用について、
平成25年度までの間は、原則として所有者負担がなくなる助成制度が整備されます。
助成申請は各区市で受け付けます。態勢の整っている区市から順次申請を受け付けます。
耐震診断費用負担割合
●
助成制度は平成23年度から25年度まで適用されます。
●建築物の立地する区市町村にかかわらず、公平に公的負担します。(国費と都費で負担)
●ほとんどの建築物で、実質、所有者負担なしの制度とします。
ただし、図面の有無・建築物の構造等によっては自己負担が生じる場合があります。
助成基準額
1,000㎡以下の部分 :2,000円/㎡
1,000㎡を超え2,000㎡以下の部分 :1,500円/㎡
2,000㎡を超える部分 :1,000円/㎡
補強設計・耐震改修費用については、平成27年度までの間、従来の助成制度における所有者負担の一部を軽減します。