耐震規定の変遷
地震国である日本にとって大地震は人々の生命と財産を脅かす最大のリスクと言っても過言ではありません。
耐震基準の変遷は、被害の大きい地震発生の度に改正が行われてきましたが、1978年に発生した宮城県沖地震後に改訂され、1981年に「新耐震設計法」が施行されました。これにより旧基準で設計した建物を「既存不適格建物」と分類し、耐震診断を行い耐震性能が規定値を満足していない建物は耐震補強する必要性があります。
また、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震では、旧基準建物の倒壊事例が多く確認されたため、耐震改修を促進する法律「耐震改修促進法」を同年12月25日に施行し、公立文教施設や官庁施設を始め、民間施設の耐震診断や補強改修がすすめられています。
「新耐震設計法」で建設された建物の中には、確認申請をせずに行われた増改築や設備の過積載などを行っている建物が存在します。この様な場合は現行基準での遡及検討や耐震診断を行い、建物の耐震性能の再評価を行う必要があります。
耐震診断・補強設計業務の流れ
■耐震診断方針の策定
①目標とする耐震性能
②現地調査項目・試験項目
③耐震診断方法
④鉛直荷重に対する補強検討の要否
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■基礎調査・予備調査
現地にて耐震診断対象建物の状態確認と耐震診断計画を作成するための情報収集を行います。
①建物概要、規模、構造
②設計図書、確認申請書類
●設計図書等、各資料の有無と内容確認
対象建物の設計図書等の耐震診断に必要な資料の有無を確認し、貸与をお願いします。
(確認申請書、検査済書、構造計算書、構造図、意匠図、施工図、増築計算書、増築図 等)
●建物履歴確認
現在に至るまでの対象建物の履歴を確認します。
(用途変更、増築、改修、設計変更、被災歴、積載荷重が建物用途範囲外の有無 等)
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■現地調査
耐震診断などの評価判定を伴う調査では、確実な資料収集や建物の状態を正確に把握する必要がありますので、特殊技術を必要とする調査を除き、当社では評価判定を行う構造技術者が直接調査を行い「見て」「触れて」結果を出します。特に鉄骨トラス構造の生産施設(工場建物)の場合では、主要部材の確認・改造や過積載など架構構造を十分に熟知した構造技術者が行う必要があります。
●共通
・図面照合調査
・図面再生調査
・積載荷重調査
・不同沈下調査
・異常箇所調査
・防水層漏水調査
・床レベル測定調査
●非破壊検査
【RC造】
・鉄筋径ピッチ測定調査
・コンクリート強度測定調査
・配筋X線調査
・ひび割れ劣化調査
【S造】
・溶接部超音波測定調査
・錆劣化減厚測定調査
・鋼材種別調査
・鋼材硬さ調査
●斫りサンプリング調査
【RC造】
・コンクリート強度、中性化調査
・鉄筋引張り強度試験
・鉄筋径ピッチ測定調査
【S造】
・アスベスト含有調査
※調査内容は予備調査にてお客様と協議し決定した内容となります。
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■耐震診断(強度・靭性能の算出)
耐震診断対象建物の設計図書及び現地調査結果をもとに構造の計算モデルを作成、『
耐震診断計算』を行い建物の耐震性能を判定します。
耐震診断では建物強度や粘りに加え、形状や経年状況を考慮した耐震数値『
Is値』を計算します。耐震改修促進法等では耐震指標の判定基準をIs値:0.6以上としており、このIs値が0.6以下の建物については耐震補強の必要性があると判断されます。
●建物の構造的特性を考慮の上、合理的な診断レベルを選定
1次診断:壁量が多い建物に適します。
2次診断:柱・壁の耐震性能を精密に診断します。
3次診断:梁・柱・壁の耐震性能を精密に診断します。
告示診断:建築物の「耐震改修の促進」に関する法律及び関連法令に基づき診断します。
●診断結果
現地調査・耐震診断報告書の提出
※結果内容により補強が必要と判断された場合
補強案
補強工事概算見積りを行います。
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■補強設計
耐震診断結果を基に耐震補強案を作成し、耐震補強位置と補強方法及び設備盛替えの可否とボリューム等をお客様と調整の上、最終的な耐震補強設計・工事内容を決定します。
●耐震補強設計・工事内容の決定
・耐震補強位置と補強方法
・設備盛替え範囲(生産設備、建築設備)
・概略工事工程(設備盛替え工事、耐震補強工事)
・工事費用算出(耐震補強工事費用、設備盛替え工事費用)
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■補強改修工事
お客様との予算調整後に工事の実施スケジュールを調整し、耐震補強工事に入ります。
●実施スケジュール調整
・工事稼働スケジュール
・工事可能日
・工事可能エリア
●設備盛替え工事
・生産設備
・建築設備
●耐震補強工事
●設備盛替え工事(現状復旧工事)
・生産設備
・設計設備
●工事監理
当社では耐震補強工事監理は新築監理と同じ方法をとっており、現場での検査確認を週一回程度、場合によっては数日おきに行います。各検査の他、各工事の行程検査、材料の検査確認、その他工事業者への指導を行います。
・材料検査確認
・現場巡回確認
・補修検査/精査
・工種別工程確認/精査
・竣工前検査
・工事監理報告書提出
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■完了
工事終了後、当社竣工検査にパスすると工事完了となります。
注)耐震調査・耐震診断の流れですが、図面等の有無や診断程度の内容により調査方法及び業務の進め方が異なる場合があります。