経産省が、この店舗のガス管などの点検を実施していた郡山LPガス保安管理センター(福島県郡山市)の点検・調査記録を確認したところ、19年12月の調査時点で配管の状態や腐食防止措置に問題はないと報告していた。また、点検時に実施した圧力検査でも異常はなく、ガス漏れはないとしていた。
経産省産業保全グループガス安全室は、「19年12月の点検後に腐食が急速に進んだとは考えにくい。
点検時に腐食を見つけられなかった可能性がある。その後、さらに腐食が進み、生じた亀裂からガス漏れしたのでは」と点検結果を疑問視する。
さらには、「事故前の配管の設置状況は、違法だったのではないか」とも指摘する。白管は湿気に弱いため液化石油ガス法では白管を屋内に設置する場合、多湿部や水の影響を受ける恐れがある場所を避け、コンクリート面などの導電性の支持面に直接触れないようにすることを義務付けている。ところが、高圧ガス保安協会の調査ではそれらの設置が講じられていた形跡を確認できなかった。
福島県は20年12月、店舗にガスを供給していた伊東石油(福島県郡山市)と郡山LPガス保全管理センターに立ち入り検査を実施した。県消防安全課の鈴木俊明課長は、「経産省など関係機関と検査結果を共有し、行政指導の必要性などの検討を進める」と説明する。
事故があってた店舗は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で20年4月24日から休業していた。同年6月には伊東石油が検針を実施。経産省の調査によると、この検針から事故当日まで最大59.1㎥のガスがメーターを通過していた。漏洩が始まった時期などは不明だ。
「しゃぶしゃぶ温野菜」を展開するコロワイドは本誌の取材に対して、「厨房のシンク下、床上30cmにガス漏れ検知器と警報器を設置していた」と回答。ただし、経産省のガス安全室は、「事故当日に警報が鳴動したことを確認した人はおらず、検知器・警報器が作動した記録も残っていない。警報器が見つかっていないため、正常に作動したか確認できない」と説明する。
また、郡山LPガス保全管理センターは事故以前に伊東石油に対して、警報器とガスメーターを連動させるよう求めていたが、伊東石油がコロワイドに伝えていたかどうかや、指摘を受けて連動させていたかどうかも確認できていない。「警報器とガスメーターを連動させていれば、事故を防げた可能性がある。警報器が一定量のガス漏れを検知すると、自動でガスの供給を遮断するからだ」(経産省のガス安全室)。両機器の連動は法的義務ではないものの、全国LPガス協会は飲食店などの業務用施設に対して連動を推奨している。
調査結果を踏まえ、経産省は全国LPガス協会などに対して、業務施設の厨房内の配管の設置状況や腐食状況を21年3月末までに確認するよう20年12月7日付で通知した。
通知では爆発事故について(1)配管の腐食、(2)水の影響を受ける恐れがある場所での白管の使用、(3)コンクリート面などの導電性の支持面に直接触れている状態での白管の使用、(4)配管図面と事故当時の設置状況の相違、(5)定期点検・調査で配管の状態や腐食防止措置などは「問題ない」と判定されていたこと、(6)警報器とメーターを連動するように求めたが改善されていなかったこと―といった懸念事項が見つかったと整理。
配管の図面を参照しながら実際の設置状況を確認したり、屋内の多湿部などにある配管のうち腐食防止対策がされていないものについて状況を確認したりすることを求めた。腐食や割れなどの欠陥があった場合にはガスの使用を中止し、設備の所有者または使用者に安全対策を講じさせるよう要請した。
(坂本曜平)