4月に東京都八王子市内で発生したアパートの屋外階段崩落事故が波紋を広げている。アパートの施工者である則武地所(相模原市)が過去に手掛けた物件の調査を進めていた国土交通省は6月1日、調査結果を発表。6件の建物で屋外階段に崩落の恐れがあると明らかにした。
調査対象は東京都と神奈川県に建つ2階建て以上の共同住宅。5月18日時点では調査対象は166件だったが、その後調査で新たに75の物件が見つかり、計241件になった。このうち213件に設置されている屋外階段は事故が発生したアパートと同様に鋼製の階段部分を木製の梁などで支持しているとみられる。
劣化などが見つかり、階段が崩落する危険性があると判断した6件については、建築研究所などによる現地調査の結果を踏まえて、所有者が階段を支える支保工(仮設の柱)の設置などを進めている。
国交省は報告があった共同住宅について、(1)建築などによる詳細調査、(2)改修計画の提出および改修の実施、(3)改修完了までの間、敵的な点検および特定行政庁への報告―の3点を所有者に求めるよう、特定行政庁に要請した。
国交省建築指導課の大島英司企画専門官は「外観からしか現況を確認できなかった物件も、『直ちに階段が崩落するなどの危険がない物件』に含めている。費用面の問題もあるだろうが、安全確保のために所有者には詳細な調査や改修などに協力してほしい」と話す。
施工者の則武地所は5月19日に破産手続きを開始している。赤羽一嘉交相は6月1日の記者改元で、「本来であれば則武地所が所有者への説明や補修などの対応を行うべきだ」と同社の対応を批判した。
建築基準法違反の有無については、図面通りに施工されているかなどを特定行政庁が引き続き調査する。「特定の指定確認検査機関が則武地所の物件を検査していたわけではなさそうだ。各特定行政庁に図面を取り寄せてもらい、調査結果をまとめたい」(大島企画専門官)
事故が発生したアパートについては、6月7日時点で八王子市が図面を取り寄せて調査を進めている。市建築指導課の岡部宙課長は本誌の取材に対して「調査の内容や進捗については、捜査中の案件のため回答を差し控える。仮に図面通りに施工されていなかった場合、完了検査などで見過ごされたのか、検査後に変更されたのか、調べる必要がある。真相を明らかにするには時間がかかるだろう」と回答した。
(坂本曜平)
ソース :
日経アーキテクチュア 2021_2-25